Tranquil Delights
2023年6月9日 〜 12日
会場 うぐいすと穀雨(東京都豊島区)
言葉は食べるものだし
料理は読むもの
これはねリチュアルみたいなものなんだ
静謐さは心の静けさでもあるから
本来持ち合わせない性質を
ぼくは言葉に宿す
心に静けさが訪れるとき
あなたは何を思う
言葉を味わい、料理を読む
そこに漂う香りはあなたの記憶
neutral 北嶋竜樹
01 礼賛する記憶
透き通るような
柔らかな君の肌に
ほんのり汗が滲む
照り返す光が眩しくて
今にも溶けそうだった
無垢で幼気な姿に
ぼくは息を詰まらせる
思い出すのは
だいたいいつも同じこと
サングルミンヌ白釉リム皿:1900年頃 フランス
02 白と黒の光
暗闇の中にだって
ひとすじの光が当たれば
たちまち辺りは明るくなる
月明かりも
あの満天の星も
光はいつだって真っ白な色を放って
暗闇から黒を逃すんだ
ほんとはね
怖くなんてない
ディゴワン&サングルミンヌ カフェオレボウル:1900年頃 フランス
03 未熟な成熟者
今しかない青さ
ほんとは好きなんでしょ?
あなただって青かったの
わたし知ってるもの
クレイユ ファイアンスフィーヌ デザートプレート:1840年頃 フランス
04 白昼夢
夢の中では何才なのかしら
自由に歩いてさ
どこに行って誰といるの?
味はする? 匂いはする?
せめて楽しいといいけど
どうなのさ 教えてよ
サングルミンヌ白釉リム皿:1900年頃 フランス
05 薄暮陰翳
ゆっくりと世界を閉じていく
僅かな光を吸い込んで
大きな影を落とすと
誘なわれるがままに
ぼくはまた闇の中へ迷いこむ
サングルミンヌ白釉リム皿:1900年頃 フランス
06 甘い蜜は甘い罠
ぬるっとした空気も
翳んだ空気も
気怠い気配も
なんだかそわそわして
落ち着かないけど
時折見せる晴れ間に
やっぱりどきっとして
仕事なんて
まるで手がつかないよ
全く困ったもんだね
さ、休憩休憩
ディゴワン&サングルミンヌ カフェオレボウル:1900年頃 フランス
後記
あなたにとって
忘れられない記憶があるのなら
その記憶を纏っている香りは
どんな香りですか
もしかしたら
それは誰かの香りかもしれないし
何かの香りかもしれないけれど
記憶は湾曲と屈折を繰り返し
どこまでも美化されていくものです
ほんとは知らないのに
知ってるような気がするのは
あなたの記憶が香りによって
惑わせれているだけかもしれません
neutral 北嶋竜樹
Photo by 祢津良子