脈絡のない料理 vol.8
2023年3月19日 〜 3月25日
会場 neutral(京都市北区)
人生って脈絡のない出来事の
連続だと思うんです
それが何であるかは
実はそんなに重要なことではなくて
その繰り返しや重なりが必要だから
僕らは延々と脈絡のないことを
繰り返すのです
neutral 北嶋竜樹
01 対比と階調
朝のツンとした空気が好き
ぬくぬくとした部屋の空気とは
まるで違うふたつの空気が
ゆっくりと溶け合っていく
ぼくの身体を介して
まるで何事もなかったように
溶けきったとき
得も言われない喜びが
身体中を駆け巡る
いつだって季節の変わり目はいい
気分を盛り上げてくれるからね
白磁汲出椀:黒田泰蔵
02 ゆめのはなし
誰もいないモールを
彷徨うように歩いて
話の辻褄が合わないなぁと思いながら
ころころ変わる場面の切り替わりにも
次第に慣れてきた
見たことのない夜空は
美しさと不気味さが同居した
何ともいえないものだし
目に入る全てのものが
サイズ感もスピードも重さも
まるででたらめだった
振り返るといつだっておかしな話なのに
どうしてだかぼくは
いつもそれをそれだと気づけないでいる
古伊万里くらわんか皿:江戸時代中期
03 怠惰な春の夜明け
ちょんと、扉を開けたのだけど
すっかり鈍ってしまったぼくの体は
隙間から漏れる暖かな春の空気ですら
何だか嫌気がさしていた
あぁ、、眩しい、、
きらきら舞う光の粒子に
思わず目を逸らした
そしてぼくの体は
すっかりと蒸発した
空っぽのコップのように
カラカラと音を立てて
転がっていった
白磁平皿:黒田泰蔵
04 意味のある時間
あーあーあーあー
うーうーうーうー
がーがーぎーぎー
ぐーぐーげーげー
たまにはぼくだって
こんな意味のないことも言うのさ
でもね
こういう時間
ほんとはとっても大事なの
御深井丸 御深井焼き向付:江戸時代
05 わたしのなかのわたし
「ねぇ、どう思う?」
わたしの中に居る小さなわたしが
そう話しかけてきた
「ちょ、ちょっと、まるで他人事のように
相談してくるじゃない。自分のことは
自分で決めてくれるかしら?」
思わずわたしはそう返答した
「だって頭の中に浮かんでくるんだもん
勝手にぶわーんって。わたしだって
どうすりゃいいのさって感じよ、全く」
時折はわたしはわたしと会話する
なんて言うか、こんな感じ。
古伊万里青磁平皿:江戸時代中期
06 ダイバーシティ
ほんとはね
分けれっこないの
ぼくも、君も、あなただって
みんな分けたがるけどね
いろんなものが綯い交ぜになって
世界はいつだって可もなければ不可もない
ぼくにとっての違和感や不快感は
だれかにとっての快感かもしれないわけだから
寛容さをもってそこにある
ただそれだけのことなのかもしれない
願わくば、その思いだけを分かち合えたら
それくらいがちょうどいいのかもね
黄瀬戸石皿 :江戸時代後期 栗木坪杓子:大正時代
古常滑山茶碗:平安時代 土器壺:杉謙太郎
07 cheer
君は君のやり方で
やりたいことを
やればいいんだよ
恥ずかしいよね
うまくいかないしさ
わかるよ、とっても
でも他人の目なんか
気にすることないさ
無駄と遠回りは
いくらだってやっていい
それが一番の近道だってことは
きっと振り返った時わかるから
だから焦ることないよ
大丈夫
大丈夫だよ
さぁ行こう
高麗青磁 大鉢:14世紀頃
08 思い出せない大事な忘れ物
あの日君の髪に触れたときの
微かな匂いとか、漂う空気とか
ぼくは丁寧に一つひとつ
手繰り寄せてみたのだけど
あれからちっとも思い出せなくなって
すっかり忘れ去られた王子様みたいに
空虚な気持ちに苛まれていた
あんなに好きだったのに
どうしたものか
全く参ったもんだよ
白磁汲出椀:黒田泰蔵