neutral
円○en  2021年1月京都「る」
ごあいさつ

人はこの地球上に誕生してから、存在しているいくつもの自然と向き合ってきました。しかしそれは向き合うというよりもしかすると、抗う(あらがう)という方がしっくりくるかもしれません。そして人類の長い歴史の中でこの「抗い」がいくつもの爪痕を残してきたように思うのです。日常から様々なインスピレーションを受ける時、わたしはいつも、きまってその「物」や「事象」の中間を探ります。目の前に起こる、または在るいくつもの事象に対して、これは自然によるものなのか、それとも人の手によるものなのか。そういう不作為なのか作為なのか分からない人と自然の中間にあるような、そんなものに惹かれるあまりに、つい何か閃いた時には、これは「意識したもの」なのか「無意識のもの」なのかということを考えてしまうのです。これは決してこれらのインスピレーションのことだけでなく、あらゆる事象や問題に言えることなのではないかと私は思っております。物事を多角的に見るということは、何かこういった中間を探る作業の連続であり、その先にどんな選択肢があるのかを、いかにして知るか。「neutral」という名前にはそんな思いも込められています。

さて今回、この会場のすぐ近くにある東寺に展示されている曼荼羅からインスピレーションを得た作品を体験していただきます。

食という手段を用いて、自身の身体の内側に曼陀羅を食べ描いていくようなインスタレーションとなっております。私たちはこの体験を通して健康であったり環境であったり、様々な角度から自身の内側に意識を向けることでもたらされる心の滋養のようなものを生み出していきたいと考えています。

このプロジェクトを通してこれから体験することが、新しい世の中の価値であったり、在り方であったり、僕らの思いを通じて小さな波紋のように揺らいでいけばいいなと思っております。後になりましたが、この食のインスタレーションの開催にあたり、実現するために多大なるご尽力とご協力をいただきました「る」のオーナー黒木さん、「濱口商店」の濱口さん夫妻をはじめご支援賜わりました関係各位に厚く御礼申し上げます。

neutral 主宰 北嶋竜樹
円◯en

曼茶羅は、サンスクリット語で「円」や「全体」「集合」の意味を持ち、語源的には「本質を有するもの」「完成されたもの」といった意味も表します。そしてアーユルヴェーダの知識では一度の食事で「甘・塩・辛・酸・渋・苦」の六つの味(六味)を取り入れることが心身のバランスを保つためにも大切とされています。

本作品では「円」をモチーフに曼茶羅からインスピレーションを得た六つの料理で構成されています。六つの料理それぞれに「六味」を割り当て、それらを変化させる「重・軽・油・乾・冷・熱」の六つの質を使って身体に取り込むことで、曼茶羅における「理と智」(六大)の関係を表し、サトヴィック(純粋で新鮮な食物)な食体験を通して自身の身体の内側に曼茶羅を描いていくインスタレーションです。

曼茶羅についてはこちらをご参照ください。

アーユルヴェーダについてはこちらをご参照ください。

01  環 (たまき)

生まれて死ぬまでの生命の循環の過程を「実を結ぶ」という一つの成果として捉え、赤い実を枝からもぎ取り食すことで生命の循環や普遍を表します。

 

地・重・甘(普遍)

莢蒾/薩摩芋/ビーツ/南瓜

04  掬ぶ (むすぶ)

 

手に取ったり見たりすることは出来ないもの。感覚を持ってはじめて存在や現象を認識することができるもの。ここではそれを可視化することで「そこにある」ものが現れます。人はそれらの体験が蓄積され記憶がある存在を浮き上がらせ認識するのです。

​※この作品は2つの構成に分けて体験していただきます。

 

風・乾・酸(活動)

邪払/百合根/蓮根/カリフラワー/蕎麦/菜の花/葉わさび

ニワトコの花/舞茸/はこべ/山クレソン​/芹/実山椒

02  透(とう)の浮標

“けがれ”がなく清らかなものには、いくつかの要素が混じり合って象られていること。輪郭とは目に見えなくとも味覚や嗅覚で感じとることができるということを体感します。

 

水・油・塩(清浄)

精進出汁/松の実/五葉松

05  櫃 (ひつ)

 

五大という概念はそれぞれの地物に対応するものではなく「性質」として捉えます。「空」には包容力という性質を持っており、心が広く相手にこだわらず全てを受け入れるという意味があります。この料理は日本の古典的なものでありますが、本来掛け合わせることのない異素材を組み合わせて供することで一つの空間を表してます。

 

空・熱・渋(包容力)

蕪/洋梨/胡桃/白味噌/金柑/温州みかん

03  うつつみ

 

言葉から受けとる印象には様々な側面があり「火」には本来あたたかで穏やかなやさしい一面があります。また対になる質と合わせることで感じとることができる残像が、そのものの特性を映し出します。これはあらゆるものに多様性が内在していることの表れでもあります。

 

火・冷・辛(温和)

豆乳/金時人参/生姜/枸杞の実/赤唐辛子

06  たまゆらの象 (かたち)

「理(ことわり)」を表す五大に対して「智(さとり)」を表した識大という概念があります。これは色があっても見ようとする気がなければ無色と同じであるという意味であり、見ようとする心の働きこそが「智」であると説いています。すぐに消えてなくなる、実体があってないような感覚が、そこに何が存在しているのかを意識させる試みです。

識・軽・苦(智)

水飴/焼塩/カルダモン/菊花/黄柚子

食後に

中国茶 HANAE 華恵

 

標高2000-2100mの高い標高に位置する自然栽培茶園の樹齢100歳ほどの茶樹から作られた雲南省臨滄産の白茶です。HANAE は、口の中に広がる華やかな柑橘系のフルーティな香りと自然な甘み、そして喉の奥に吸い込まれるコクが特徴です。

こちらのお茶は新潟を拠点に中国茶・台湾茶を販売する「IDLE MOMENT」の戸田裕也さんにセレクトして頂いております。食事の最後を渋味で〆るのはアーユルヴェーダの知識では過食を防いだり消化促進にもとても良いとされています。

茶種:雲南古樹白茶 産地:中国 / 雲南省臨滄 生産年:2019 春

​おもたせ

理と智

今回のテーマである五大と識大をモチーフに作った「おむすび」です。フードロスの観点からも、ひとつは五大の料理で使用した食材の端材で作ったふりかけを纏わせています。もうひとつには意識を向けることで深い味わいを感じてもらえるように白米そのものだけを結んでいます。またお飲みいただいた白茶の茶葉殻を佃煮にして添えてございます。そしてよりサステナブル(持続可能)であることをテーマに、包みには竹の皮を使用しております。この竹の皮は洗って繰り返し使用できます。

表面に蝋状の皮膜を持ちながら適度な通気性と強靱な繊維質で強度もあり、フェノール物質の抗菌作用も併せ持ち、外部からの異物混入や食品の時間経過による細菌の発生を遅らせる効果があります。美味しさを保つことと環境に配慮すること、大切なことを先人達の知恵から学びました。

賞味期限:冷蔵庫で保存の上お早めにお召し上がりください。

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